CHRISTMAS BREAK 前編
メリークリスマス、みんな。
この記事を書いているのはクリスマス前だが、投稿されるのはきっとクリスマス、12/25だろう。
クリスマス....
今年もやってきた、一年の中で最も重要なイベントの一つである。
日本では、10/31のハロウィンが過ぎると、街は一斉にカボチャが撤去され、光害(イルミネーション)と騒音(クリスマスソング)と対人兵器(クリスマスに向けて付き合ったであろうカップル)で溢れている。
11月と12月は街中クリスマスに彩られ、実に、1年の6分の1をこのイベントによる支配を受けているのだ。
クリスマスとは元来聖なるイエスキリスト様の誕生の日だが、現在の日本では「恋人と幸せに過ごす日」となっているのは周知の事実だろう。
人様の誕生日に恋人と楽しく過ごすというのはお門違い過ぎる。直ちにそういった行為は辞め、聖なるイエス様の誕生を祝うべきだ。
...という話がしたい訳ではない。
クリスマスはリア充が幸せに過ごす日であると同時に「我々」非リア充は何をやっても負け組になる日であるということだ。
たとえバイトをしようが、非リアで集まってパーティーしようが、自分の好きなことに打ち込もうが、どうやってもリア充に勝てない日なのである。極論、息をするだけで、歩くだけで負け組なのだ。
「我々」非リア充は何をどうやっても勝てない。クリスマスは1年の6分の1も鎮座しておきながら、そんな非常に残酷なイベントである。
クリスマスイブに街を歩く非リア充たちの顔をイメージしたと言われている(大嘘)、イリヤ・レーピン作「ヴォルガの船曳」
では、「我々」非リア充は何をすべきなのか。
私はこのイベントに向けて考えた。どうやっても勝てない。でもすんなり負けるわけにはいかない。だからといって勝てる訳がない....
就活が終わり、秋も深まった頃から、毎日毎日その自問自答を繰り返してきた。そして私は一つの結論に至った。
どうせ負けるなら、全力で負けようと。
「負ける」方向で全力を尽くす。この「積極的敗北主義」は、2020年後半期の私のスローガンとなった。
では、具体的には何をすべきか。
クリスマスに、「敗北者」として何が出来るのか。
その答えは、11月に入っても出てこなかった。
しかし、人間火事場の馬鹿力とはよく言ったもので、"奴(12/25)" が近づくにつれ、私のクリスマスの過ごし方は決まった。
全力で、匂わせる。
これだ。
全力で勝ったフリをし、実は負けている。
側から見たら「クリスマス彼女できました!!!」と散々言っておきながら実はいない。居ないどころか出会ってもない。こんなに面白いことはないだろう。
「積極的敗北主義」の旨みはここにある。敗北することで、周囲から笑いを取れる。人間、やらかしていたり、変な行動をしていたり、不幸になっている人を見ると、自然と笑いを感じる。面白いと感じる。
ある友人が、ある日私にこんな事を言った。
「お前は、不幸な方が面白い」と。
本当に彼女が出来て幸せになるより、彼女が出来ず、恨みつらみを述べつつ、何処かでそれを欲しがっている。そんな様子がとても面白い。
そういう意味の発言だった。
私にとって、この発言は衝撃であった。常日頃リア充に恨み、憎み、彼女が欲しいと絶叫してきたが、いつまで経っても彼女も出来ない自分を、どこかで美味がっている。
そんな自分に気付かされたのだった。
これが、私が「積極的敗北主義」に転じた理由だ。
というわけで、クリスマス 全力匂わせプロジェクト「CHRISTMAS BREAK」は始動した。
①何をもって匂わせるか
まず、匂わせとは何なのか。
>>
はっきりと明言するわけではないが、“それとなく思わせる”ような“何かを匂わせる行為”のこと。特に芸能人に対して使われる言葉である。
ブログやSNSで、女性芸能人が交際を噂されている男性芸能人と同じものを身に着けた写真を投稿し、“交際を匂わせる”行為を指して使用される。(numan.tokyoより引用)
つまり、自分に彼女が居るような振る舞いをSNSですれば良いということだ。
無論、匂わせ投稿するだけでは意味がないので、匂わせ投稿の翌日にネタバラシもしなくてはならない。
その為、全力で匂わせ投稿をした後、1人でホテルに泊まっている様子を投稿をすれば、"全力で負けた"と言えるに相応しいだろう。
②計画
まず前提として、匂わせを行うには大量の金がいる。何たってクリスマスは、リア充にとって"特別な日"なのだから、普段なら絶対にしないような贅沢をすることだろう。
その為に、私は10月から2ヶ月に亘ってバイトにバイトを重ねた。週5のバイトの他、単発バイトを入れまくり、1ヶ月に10万を余裕で越す程度にまでなった。まぁ稼いだ分自分の為に使うので手元にあんまり残らなかったというのは内緒だ。
では、一般的なリア充はクリスマスという特別な日に行いそうなことは何か。私は、以下の3つのプランを立案した。
1、ホテルのスイートルーム宿泊
安直だが、行う可能性としては充分に考えられる。
スイートルームなんて、特別でもなんでもない日に泊まる人なんて居ないだろう。クリスマスという特別な日だからこそ、何万も出して特別な一夜を過ごすのだ。
だが、それはリア充の場合であって、私のような敗北者が一人で泊まるには負担が多過ぎる。
匂わせ投稿で貰えるであろうたかが何十かのいいねの為に、10万近くの金を出すのは不釣り合い過ぎる。
一応値段を調べてみると、今話題のgotoを使って6〜7万円程度。金は有り余っているとは言ったものの、泊まるだけで6〜7万はいくらなんでも負担がデカ過ぎる。
そんな予算的な理由で、この案は却下となった。
2、夜景が見えるホテルに宿泊
クリスマスといえばリア充が求めるのはロマン。ロマンといえば夜景。そんなよく分からない方程式をたて、いざ調べてみた。
夜景といえば有名なのは横浜である。家からはかなり遠いが、横浜は言わずと知れた繁華街であり、夜景以外にも(リア充として)楽しめるものはたくさんある。そんな理由で横浜をチョイスした。
正直、横浜でリア充が行きそうなところに1人で行き、夜景が見えるホテルに1人で泊まり、その様子を投稿するというのは「匂わせ」としては十分であった。
しかし、何かが足りない。というより、わざわざ横浜である必要が分からなかった。「クリスマスに彼女と横浜で過ごす」というのは、どうにもパンチに欠ける。そんな中、また新たに思いついた案によって、横浜案はかき消される事となる。
3、ディズニー宿泊
日本最大のテーマパークであり、またド定番中のド定番のデートスポットだ。
それも、ただ行くだけではない。
「クリスマスに彼女とディズニーに行き、そのままディズニーリゾートに泊まる」
まさに、リア充の中でもトップカーストに当たる方々が行う所業だろう。
思いついた私の行動は早かった。バイトの休憩時間、スマホを手にした途端一気にディズニーランドとディズニーリゾートの情報を調べ上げた。
しかし、ここである問題が発生した。
私はディズニーで匂わせられるような写真が撮りたいだけなのであって、ディズニーで1人で遊びたいわけではない。ディズニーに興味がないのもあるが、わざわざ遠く離れた千葉まで行くのだから、自分の好きなところに行きたい。
ではどうすれば良いか。
ディズニーランドの門の前で匂わせ写真を撮り、その後ディズニーリゾートに1人で宿泊すれば良い。
そうする事でランドに入る金8000円強が浮く上、寝床も確保できる。
ディズニーリゾートに泊まるのは確かに金がかかるが、私が行いたいのはあくまで匂わせであって、ディズニーを楽しむ事ではない。
こうして私は、「東京ディズニーセレブレーションホテル」を12/24に1名で予約したのだった。
③種蒔き
さて、ざっとクリスマスイブに何をするか決めたところで、次は "種蒔き" を行う必要がある。
すなわち、周囲に「彼女が出来た」ということをそれとなく伝えるという段階が必要となる。
よく考えて欲しい。それまで「彼女が居ないキャラ」として定着していた奴が、急にSNSで「クリスマスに彼女とディズニー来ました!」と言っている。
100%、ネタだと思われるだろう。
「あー毎年恒例のネタねはいはい」
これでは、「全力で負けた」とは言えないと思う。多分2日後には私がそんなネタを投下していたことすら忘れられるだろう。
全力で負ける以上、何ヶ月か、いや何年かは語り継がれるようなネタでなければいけないのだ。
やるからには本気で。これが今回のプロジェクトのコンセプトであると勝手に思っている。
そういうわけで、彼女がいることを周囲にアピールしたうえで、全力でディズニーデートを楽しんでいるということが伝わらなければいけない。
ここで、冒頭から読者諸兄が感じていたであろう疑問が、自ずと解消してくるだろう。
先日投稿したご報告。
あれも"種蒔き"の一部だった。
プロジェクト達成のためとはいえ、よくあんなに痛い文章が書けたものだと我ながら才能を感じたものだ。
ちなみに、当ブログでは今後もガイジエピソードを存分に語るつもりなので、ご安心頂きたい。
だが、ご報告だけでは、私の身近にいる人間には伝わらない。ここで、私が1ヶ月弱の間に行った「彼女いるアピール」のエピソードをご紹介しよう。
・久々に会った友人に、おもむろに「俺...クリスマスに予定できたわ」と切り出し、ディズニーに行く事を伝える。
・ネットや又聞きした恋愛知識で、彼女いない奴に「恋愛とは何か」の講釈を垂れる
・飲み会中、事あるごとに「でも俺今年はリア充だからw」と口を挟む
・友人と飯を食ってる時、「ごめん、俺行くところあるから」と無駄に早く帰る(行くところとはもちろん自宅である)
・「オレは彼女にクリスマスプレゼント買ったんだけど、向こうは買ってるか分からない...どうしよう」と無駄にリアルな相談を持ちかける
・彼女はどういった人なのかといった具体的な情報は「そのうち話す」といってはぐらかす
・もう引退している身分なのに、サークルに出向いて喧伝する
自分でも書きながら頭が痛くなるエピソードばかりだが、「彼女が出来て調子に乗ってる奴」としての演技は全力果たせたと思っている。
ちなみに実際はどうだったのかと言うと、ガチで出会い系をやろうとして、普段の写真をプロフィールに設定していたところ、誰ともマッチングせず、あっという間に有料期間が終わり、4000円をドブに捨てた。11月中旬の出来事である。
天才的扇動の才能を以って民衆を熱狂の渦に巻き込み、ドイツを泥沼の戦争へと導いたナチスドイツの党首アドルフヒトラーは、このような言葉を残している。
「嘘を大声で、充分に時間を費やして語れば、人はそれを信じるようになる。」
漠然と、何の計画もなくただ「彼女が居る」と周りに言うのではなく、クリスマス数週間前から人と会うたびに何度もその嘘を伝える。そして、極め付けにと先日の投稿のように最もらしいことを書き立てる。
そうすることで、こちらは彼女に関する情報を一切明かしていないのに、周りは私に彼女が居るという大嘘を信じ始める。
ヒトラーは次のようにも述べている。
「人々が思考しないことは、政府にとっては幸いだ」
自分らの政策に対し、民衆が何も疑問を持たない。それこそが政府が一国を操るのに最も都合が良い、と言う意味だ。
周りが「私に彼女がいる」という事実に何も疑問を持たなくなった時こそが、"種蒔き"としてのステップ完遂と言えるだろう。
そういうわけで着々と「あいつに彼女が出来たらしい」という噂は広まっていった私は、あとは当日を迎えるのみとなった。
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次回、いよいよ匂わせ実践へ。
後編へ続く。